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今回の旅の目的は、里見氏の彷徨える霊たちを解放するということでした。
それは、滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」とも大きく関わってきます。
この館山城は、そのメインイベントというべき城です。
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もともと古館があった丘に、里見義頼が館山城を建てる計画をして、その息子の里見義康の代に完成、安房岡本城から本拠をこの地に移します。
里見義康は豊臣秀吉の小田原攻めに参加しますが「関東惣無事令違反」を咎められ、代々苦心して手に入れてきた上総半国を没収されて、この安房一国に退いたのです。
おそらく、これは秀吉の謀略だったと思います。

そして里見義康の息子、里見忠義の代になると、徳川家康の謀略によって今度は館山から伯耆の倉吉へ配流となります。
理由はともかく、江戸に近く江戸湾入り口を抑えられることへの潜在的恐怖感、そして豊臣氏との縁のある外様への警戒感から安房から退去させたかった、ということでしょう。
里見忠義はさらに鳥取藩主池田光政に4千石まで取り上げられ、百人扶持の知行とされます。
そして、享年28歳の若さで無念の死を迎えます。
これにより、房総に名を馳せた戦国大名・里見氏は事実上滅亡します。
里見忠義の死去の後、板倉昌察ら8人の側近が殉死し、忠義とともに大岳院に葬られて「八賢士」と讃えられました。(6人、7人説も)
彼らが「南総里見八犬伝」の「八犬士」のモデルになったといわれています。

館山城から南東の方角へしばらく行ったところに、八遺臣の供養塔があります。
後に伝え開いた里見氏の旧臣が分骨して持ち帰り、建てたといわれている墓です。
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ここは、以前にも2〜3回ぐらい来たことがあります。
何回来ても、僕はちょっと薄気味悪さを感じてしまいます。
実はなぜそう感じてしまうのかが、今回の旅でわかったのです。
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館山城跡のある城山公園に近づくにしたがって、どこからともなく妙な音が聞こえてきました。
地下鉄のトンネルの暗闇のずっと向こうから電車が走ってくるような、そんな音でした。
あるいは大きな空調機が回っているような、そんな音にも聞こえました。
とても不思議な音でしたが、草刈り機で草を刈っている人がいるのかもしれないと思って、あまり気にしないようにしていました。

館山城(博物館分館)に着いた時は聞こえなくなりましたが、八遺臣の墓のあたりから、また聞こえてきました。
館山駅へ向かう途中で、これは間違いなく霊的な音だと気づきました。
これは、大勢の里見の兵たちが気勢を上げて敵地へ攻め込んで行く時の音です。
その音に、重いフィルターが掛かったような感じです。
それがわかった時、身体に電気が走りました。

そういえば、僕は以前にここに来た時も、この音を聞いたような気がします。
ここではなかったかもしれませんが、間違いなく子供の頃にどこかでこの音を何度も聞いています。
この後に僕が行った、伏姫が生まれ育ったといわれている滝田城跡や犬掛古戦場(里見の墓)でも、この音が聞こえてきました。
里見の墓で、僕は里見忠義の霊に取り憑かれます。
なぜなのか?
家に帰ってきて色々調べたのですが、その原因がわかりました。

里見忠義は慶長16年(1611年)に、老中大久保忠隣の孫娘を正室として迎えます。
大久保忠隣は、1614年の幕閣における本多正信・正純親子との抗争に敗れて失脚してしまいます。
この大久保忠隣事件への連座、そして館山城の城郭の無届改修、身上に対して家臣の召抱えが多すぎるなどの理由で、里見忠義は改易されてしまいます。
これは徳川家康の謀略というより、完全に本多正信・正純親子の謀(はかりごと)です。
この謀によって、里見氏は滅んだようなものです。
本多正信は僕のご先祖様だったと考えれば、当然忠義の霊は正信の子孫の僕を怨んで取り憑くでしょう。
僕は、ご先祖様の尻拭いをしていたのです。


館山の安い民宿を朝6時半頃に出て、館山城跡を見て回った後、館山駅からJR内房線に乗って岩井駅で降りました。
駅前の観光案内所で自転車を借りて、伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)を目指しました。
伏姫籠穴の立て看板のあるところから細道をだいぶ走ってきたのですが、まだ着かないので道を間違えているのかなと思っていると、反対側から丸めがねをした、ちょっとお洒落ないかにも文学少女といった趣きの女性が「こんにちは」と声をかけてきたので、「こんにちは、伏姫籠穴ってこちらの方向でいいんですか?」と僕は訊きました。
「はい、もうすぐそこで、そこの階段をずぅ〜っと登って行ったところにあります。」と、とてもハキハキした声で教えてくれました。
きっと、「南総里見八犬伝」を読んでここに来たんだと思います。
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立派な門があって、なかなか風情のある場所です。
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山桜と新緑がとても美しく、ここの自然の波動はすごく気持ちが良いです。
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伏姫籠穴は、思っていたよりも小さな穴でした。
本当に伏姫は、こんなに小さな穴に八房と籠って読経をしていたのでしょうか?
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5円玉が財布の中になかったので、50円玉を一枚置きました。
穴の開いた硬貨が、霊を救うことになります。
本当はもっと、穴の開いた硬貨を用意しておくべきだったのですが・・・
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「南総里見八犬伝」は滝沢馬琴の小説ですが、前回の記事にも書きましたが、まったくの作り話ではなく、幾つもの実話を繋ぎ合わせて書かれたものだと僕は思っています。
伏姫は実在の人物か、もしくはモデルになった人物がいるということです。

実をいうと伏姫籠穴に入った時、伏姫の霊を感じていました。
この清らかな自然の波動と伏姫の気配が相俟って、ひょっとしたらさっき挨拶を交わした丸めがねの文学少女は伏姫の化身だったのかもしれないなんて、勝手に妄想したりしていました。

つづく


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